PIERNA.F.S ~新規参入チームの現在と覚悟~
群馬県フットサルリーグの3部には多くの新規参入チームが押し寄せた2016年シーズン。
突然のチーム数の増加によりリーグはプレーオフ制度の導入となり例年に無い盛り上がりを見せてくれた。
現在、群馬県フットサルリーグの顔ぶれは緩やかな世代交代こそあれど新風が吹き抜けることは少ない。
今シースン1部リーグで大躍進したF LOTTSが「新世代」の旗手である事は間違いないだろう。
「新世代」の定義は曖昧だが、若くて勢いを持ったチームやフットサルリーグ新規参加チームがこれからリーグに刺激をもたらす存在になればリーグは更に活性化する。
今シーズンの3部リーグは上の舞台を目指し鎬を削るステージとなった。
多くの新規参入チームが火花を散らし2部昇格の切符を目指した。
今回、GUN-SAL.NETが注目したのは昇格をかけたトーナメントで惜しくも敗れてしまったPIERNA.FSというチームである。
彼らは少数精鋭ながら試行錯誤しつつ上のステージを目標に掲げる新規参入チーム。
フットサルに対しての情熱を持ちながらも、指導者、メンバー、活動環境と運営上の課題は数多く頭を悩ませているチーム代表も多い。
戦術が・・・メンバーが・・・競技志向が・・・と、高みを目指すも、つまづいてしまうチームも多い。
PIERNA.FS(以下PIERNA)が2部への切符を求め必死に3部リーグ戦う裏側を追った。
フットサルとサッカーの狭間、競技としてフットサルと向き合う難しさ
チーム創設後、しっかりとした準備期間も無いまま県リーグ3部へ参入。少なからず自信はあったという井野代表の言葉通り勝ち点を少しずつ積み重ねていった。監督不在のチームに頻発する問題でもある選手交代の部分では、選手が少ないという事がプラスに働き自分たちでコントロールしながら試合を行っていった。
しかし練習となると人数が少ないことがデメリットとなってしまう。ゲームを行えることが少ない為、練習の大半を基礎の部分に当てているという事だった。満足できる質の練習は少ないものの、それでもメンバーは楽しそうにプレーをしている。
プレーについて話し合ったり意見が食い違う事もあるが、メンバー同士の仲が良くお互いを尊重しながら楽しんでいると井野代表は言う。それでも難しい試合の後はミーティングで衝突することもあった。楽しむというコンセプトを掲げながらも負けたくはない。ありがちなジレンマを抱えながらもメンバーと話し合い、少しずつフットサルと向き合って行く事を決めた。全ての部分から徹底するというのは難しいことであり大きすぎる変化は何かを失う可能性もある。少しずつだが、変化を受け入れ出来ることから少しずつ始めていこうと決めた。
競技チームとして上のカテゴリーを目指していく覚悟
3部リーグは全16チームがそれぞれ8チームの2組に別れリーグ戦を行い、それぞれの上位2チームがトーナメントで優勝と昇格を決めるレギュレーションである。順風満帆とはいかないものの2部への昇格を目指しPIERNAは順調に勝ち点を積み重ね6勝1敗でリーグ戦を2位で終えた。井野代表曰く個の能力を生かした戦い方ではあったが、少ない人数でしっかりとリーグを戦い抜いた。総得点こそ及ばなかったが失点はリーグ内でもっとも少ないという結果となった。
悔しい初黒星の相手は首位通過を決めたFC.Bakazoだったが、トーナメントへの進出を決めた為、リベンジのチャンスが生まれたのだ。
共に進出した決勝トーナメントを勝ち上がり、因縁の相手である初黒星を喫したFC.Bakazoと決勝戦を戦いリベンジ、そして優勝と2部への昇格を掴み取る。
最高のシナリオに向けてPIERNAのメンバーは着々と準備を進めていた。
勝負の分かれ目、してはいけないミスをしてしまった
3部決勝トーナメント準決勝の相手は、新規参入チームでありながらBブロックを無敗で首位通過したFC.BEAST ISESAKIに決まった。
4チームが進出する決勝トーナメントの3チームが新規参入チームとなった。勝ち上がった4チームは安定した結果を残している。
どのチームもしっかりとした個を持っていて厳しい戦いになる事は想像が付く。警戒を怠らない井野代表はしっかりとした準備を行う為、積極的に練習試合を組み相手への対策を進めていった。しかし決戦の日、PIERNAを待っていたのは今シーズンの終わりを告げる敗戦だった。
FC.BEAST ISESAKI( 4 ( 3PK2 ) 4 )PIERNA F.S.
敗因について井野代表に尋ねると、チームで決めたはずの、してはいけないミスをしてしまった。との答えが帰ってきた。拮抗したゲームの中で相手チームにずる賢さや巧さがあり、競り負けてしまった。しかしマイナスばかりではなくチームとしての戦術やフットサルに対しての考え方等について考え直す良い機会になったという。
結果だけ見れば同点からのPK敗け。悔いが残る結果となってしまったがこの試合を最後にPIERNAの2016シーズンは幕を閉じる。
フットサルチームとして戦っていくために
敗戦後すぐ井野代表は気持ちを切り替えやるべき事を整理し、精力的に動き始めた。それは「フットサルチーム」として必要なものを手に入れる為だ。
通常、立ち上げたばかりのフットサルチームが苦しむのはフットサル競技への理解。最低限の守備戦術や攻撃を有利にしていく技術・戦術等。そういったものが足りないと考えた井野代表は自らのチームをレベルアップさせてくれる存在を探し始めたのである。しかし、まだまだ群馬では指導者不在のチームも多く競技フットサルチームとして上のレベルを目指していくとは言ってもそう簡単には見つからない。
仮に、見つかったとしてもPIERNAというチームらしさが失われるのを恐れるメンバーもいる為に慎重にならざるを得ない状況だという。
現在は適任となる指導者を探しながら、メンバーそれぞれがフットサル競技と向かい合う為に勉強を進めている最中である。経験があり優れた選手たちとの交流の中で、積極的にフットサルを学んでいるのだという。
もう一つの課題でもある選手の少なさを解消する為に、積極的にメンバーの勧誘も行っている。PIERNA F.S.というチームらしさも出しながら、上を目指したい。がむしゃらで貪欲な彼らの気持ちに呼応する様に何人かの新選手が徐々に集ってきているそうだ。
来季の体制についての詳細は決まっていない、しかしPIERNA F.Sが目指すべき目標は変わらないと井野代表が力強く話してくれたのが印象的だった。
群馬県のフットサルチームは地域や学校といったコミュニティから形成されているチームが多く頻繁に移籍が行われている訳ではない。3部構成の群馬リーグでもメンバーが不足しているチームも多く優秀な選手の確保は各チームが意識している部分である。それでも強いチームを形成する為には選手が集まる事は必須条件である。そのためには魅力的なクラブを作り上げる事が大切であり、PIERNAもそれを強く意識している。これからフットサルチームとして飛躍していく為に今、まさに正念場を迎えている。
フットサルチームの代表者という存在
今回、取材を続けていく中で感じたことがある。それはチームの代表者という存在の大きさである。
各チームには必ず代表者が存在していて、彼らを筆頭にチームは運営を行っている。監督を兼ねる者、選手を兼ねる者、プレーをしない者と様々なタイプがいる中、多くのチームに共通して言えるのがチーム代表者が運営の為に多くの困難と立ち向かっているという事だ。
リーグ運営の為の代表者会議を始め、部費の管理、会場・練習場の管理、練習試合の為の外部とのコミュニケーション、メンバーの出欠、道具の管理。大半のチームがこういったタスクを代表者に委ねてしまっている。
「好きでやってるんで苦じゃないです」と井野代表は言うが、例に漏れず様々なタスクを一人でこなしているそうだ。
新規チームが立ち上がれば必ずそこに代表者が生まれる。代表者を中心にチームが生まれると言った方が正しいかもしれない。
チームが活動してく為に代表の熱い想いがあり、メンバーを支えているのだと感じた。そしてそれはPIERNAも例外ではない。
メンバーと同じスタートラインに立ちながらも、選手よりも多くの悩みを抱えながら奔走する。フットサルに限らずサッカー等でも新規でチームを作ると聞くと大半の人が「大変そうだなぁ」というイメージが浮かぶだろう。
ただ、気心の知れた仲間と同じ目標に向かって努力するというのはとても素晴らしい事でスポーツの本質なのだと改めて感じた。
まだまだ苦労も耐えないがやり甲斐は感じていると井野代表は言った。まだまだ不安定ではあるが手探りで進むPIERNA F.Sが今後、どう成長していくのかとても楽しみである。
PIERNA.F.S代表 井野克成インタビュー
チーム名について教えてください。
チーム名はPIERNAでスペイン語で足という意味です。
僕が大学生だった頃にスペインサッカーが好きという理由でスペイン語を選択していました。
スペイン代表のパスサッカーに憧れていたのもあり、スペイン語で名前を付けました。
チーム発足や構成について教えてください。
以前にCRAQUE(群馬県フットサルリーグ2部)に所属していた繋がりで現在のメンバーとチームを結成しました。
僕自身、フットサル競技をやっていく中で「色んなことをやってみたい」「もっとチャレンジしたい」という意欲が強くなっていきました。
他のチームに移籍したりする事も考えたのですが、他のチームにはやり方や決まりが存在しているので自由にやっていくのは難しいなと考えました。
出した結論は、片っ端からいろんな事を試してみてやられながら出来るようになっていけば良いという事でした。
「自分たちでやりたい」という同じ考えを持つ仲間達と自分を代表に新チームを結成することに決めました。
メンバーがまとまって抜ける形になってしまいましたが、今のメンバーと出会うことになったチームですしフットサル競技に触れる時間を作っていただいたCRAUQEさんには今でも感謝をしています。
チームの理念や考え方などを教えてください。
チーム理念としては「楽しくやる」という事です。
これは自分たちが楽しくプレーするのも勿論、見ている人たちがフットサルをしたくなるようなチームにしていきたいと思いから来ています。
みんなの意見を尊重して自由にプレーする事を大切にしています。
ただ、活動する中で自由にやりすぎても上手くいかないのでメンバーで話し合った結果、みんなで決めたことはみんなで守ろうと言うルールも生まれてきています。
どのような活動を行っていますか?
基本的には週1回で活動しています。練習を木曜日に行っていて、日曜日に活動出来る場合は練習試合を入れたりしています。
集まったメンバー個サルで一緒に蹴ったりしていることもありますが、環境としてばらつきがあるので状況に応じて活動の内容や質を話し合って決めています。
チームとしての目標を教えてください。
将来的には1部の上位リーグを目標に結成しましたが、実際にそこへ到達した時に関東リーグを目指したい人、1部でプレーし続けたい人と意識の差が出てくると思います。
そういう時にチームの方向性がブレていくのも嫌なのである程度組織を大きくしてセグンドチームを作ったりしてという事も考えています。
現在はまだまだ人数も少なく人数的に辛いという事もあり、人が集まるような組織を形成していきたいです。
闇雲に人を集めると意識の違いやレベル差によるチーム力の低下などを引き起こす要因になるのでメンバー集めに関しては慎重に行っています。
所属しているメンバーと同じ意識でプレー出来る仲間と巡り合いたいと考えています。
所属選手は7人です。仲間内で結成したのもあり、客観的に見てまだまだグループ感があるなぁと感じています。
もっと質が上がって僕らのフットサルを見て「一緒にやりたいなぁ」と思って貰えたりして、僕らのチームに合う人が来てくれればいいなぁと思っています。
長期的な目標としてはまずは1部に昇格する事です。短期的な目標で言えば2部に昇格をすることですね。
参入1年目をを振り返っていただけますか
いきなりチームとして機能するのは難しいとは考えていましたがリーグ戦の序盤から大変な事が続きました。
チームとしてまとまることが出来ず、勝てたものの良くないゲームとなりました。
メンバーが好き放題やってしまった為、チームとして全く機能しなかったのが理由でした。
これはまずいと思い試合後にメンバーと話し合いの時間を持ちました。
ただ有難いことに、メンバーもすぐに理解をしてくれました。
自分はサッカー的な感じでやっていきたいというメンバーもいれば、自分はフットサルをやっていきたいというメンバーもいました。
そこで話し合った結果、少しずつ自分たちらしさを失わない程度で決めごとを作ってプレーをしていこういうことになりました。
ディフェンスに関してはみんなバラバラではまずいのでやり方を固定しようと決めました。
攻撃は自由度を失いたくないと決めました。
しかし最近では攻撃でも戦術の必要性を痛感してきているところでこれからの方向性を話し合ってる最中です。
その話し合いが役に立ったのか、ただ好き放題やってたら上手くいかない事に気づいてくれたのでその試合以降はある程度自分たちらしさを出して戦うことが出来たと思います。
目指している2部リーグに対しての印象を教えてください
去年まで2部に所属していたのもあって雰囲気はわかっているつもりです。
今年の3部は新規参入でも強いチームが多かったので2部だから3部だからと、一概に比べられないなぁと考えています。
自分たちの現状と課題について
まだまだ僕たちはフットサルを始めてからキャリアも薄いのでスペースが大きい試合の方が自分たちを活かしやすいのかなと思っています。
スペースが無いと狭いところを崩す戦術も無いので、今後どんな会場でも対応できるように練習していきたいと思います。
僕が思うチームの良い部分は個人技や個々の能力が高いところですね。
メンバーの中でも福島選手は個の能力が高くとても良い選手です。彼を始めとした他のメンバーも能力は高いです。
個が強い分、言う事を聞いてくれないので中々、それぞれが思うことを素直に聞き入れられないのが今の良くない部分なのかなと思っています。
現在、チームには監督もいないのでメンバーも僕が決めている状況です。マネージメントの部分もこれから改善していかないといけない部分ではありますね。
チーム代表としてメッセージ
まだまだ僕らはフットサルについて経験も知識も浅く成長段階だと思っています。
しかし、成長したいという気持ちは強いので色んなチームと練習試合等をさせていただきたいです。
今はまだ相手として物足りないという事もあるかもしれませんが練習試合等のお誘いもお待ちしております。
これからもPIERNAをよろしくお願いいたします。
PIERNA.F.S #4福島慶宗インタビュー
サッカーやフットサルの経歴について教えてください
サッカーは小学校から高校まで8年間、フットサルは4年位前に伊香保に住んでいた時に遊びで初めたのがきっかけで始めました。
2年前くらいにクラッキさんに所属した際に競技フットサルをスタートしました。今シーズンPIERNAが発足し今に至ります。
サッカーとフットサルの違いについて
フットサルを始めた当時は足裏で止めるという事が無かったので非常に戸惑いました。サッカーではなかったので修正するのに時間が掛かっていますね。
まだまだサッカーが身に付いてしまっていて足裏のコントロールには慣れてはいない状況ですので練習に励んでいます。
フットサルの面白い部分
フットサルはパスが良くつながるのを見たりすると面白いなぁと思います。
うちのチームだとドリブルが多くなってしまうのでそういうフットサルをするのはまだまだ難しいですね。
ただチームとしてはボールが動くフットサルを目指しているので頑張りたいと思っています(笑
自分のプレースタイルについて
プレースタイルと言えるものではないですが、サッカーをしていた時もDFだったので守備には自信があります。
サッカーではサイドバックをしていたのもあって1vs1では負けたくないですね。ボールを奪ってカウンターというイメージを常に持ってプレーしています。
チームでプレーしていてどんな瞬間が楽しいですか?
まだ結成以降負けていないのもありますし点が取れているのでその瞬間は楽しいですね。
(※取材後の2016シーズンの決勝トーナメントで惜しくも敗戦)
メンバーは少ないながら出席率は高いので楽しいことを共有できているといのも良いですね。
周りのチームとの関係について
ブリッツミネリオは練習試合をしたり練習を手伝ってもらったりして非常に良くしていただいています。
練習試合をきっかけに繋がった仲なので同じ3部を戦っている仲として大切にしていきたいですね。
プレイヤーとしての目標について
Amigresso前橋の高橋重大選手を目標にしています。あの人は本当に凄いなぁと思っています。
以前、CRAQUEに所属していた時に選手権でBFC(当時 高橋選手はBFC所属)と対戦した時に一瞬で置き去りにされてゴールを決められました。
まだまだ目標だなんて言うのもおこがましいですが、あの時以来ファンとして、目標として意識させてもらっています。
チームの長所や現状の課題を教えてください
前半の入りは凄くいいと思います。前半で先取点を取ることが多く立ち上がりから優位に進められる強さがあると思います。
ありがちですが逆に後半に弱く、これから修正しなければいけない課題ですね。
僕自身は1部の上を目指してやっていきたいので、質を高めるためにもチーム内の意識の差を改善したいなぁとは思っています。
練習は個人を高めるような練習を中心にやっています。ゲームが出来ないので(笑
周りの協力を頂いて助っ人を借りたりしてゲームを出来たりする事もあるので、いつも助けてくれる方々には感謝しています。
チームとしての目標を教えてください
もっとメンバーにフットサルの戦術を覚えてほしいなぁと思っています。その中で自分たちに合った戦術を見つけていきたいなと考えています。
その上で個人の考えを持ち寄って共有して試合で出せたらいいなと思います。
(#4福島選手、取材中にも何度も能力の高さを見せてくれた。基本的な技術が高く、ハードワークも厭わない。個としてチームの中心になれる存在)
参入初年度、あと一歩のところで昇格を逃してしまったPIERNA。惜しかったからこそ来季に懸ける想いも強いはずである。来シーズンのPIERNAの戦いから目が離せない。
PIERNAメンバー募集
PIERNAは、現在メンバーを募集しております。
我々と一緒に群馬県リーグに挑みませんか?
まず、PIERNAってどんなチーム?をざっくばらんに説明します。
一言で言うと、サッカー経験者(フットサル未経験者)が集まったチームです。
フットサルの勝負において、サッカースタイルの何が通用し、何がダメなのかを自分たちで体感し、これからフットサルを勉強してみんなで覚えていきましょうってチームです。
そんなわけで、フットサルのルールや定石を知らない方々は入りやすいチームだと思います。
もちろん、勝つために学んでいくので、活動は本気で取り組みます。
そんなPIERNAに少しでも興味を持った方は、ホームページの募集要項をご覧頂き、ご連絡頂けたら幸いでございます。
PIERNA F.S. 代表
井野 克成(27)
stvge7@ezweb.ne.jp
ホームページ
http://pierna.wpblog.jp/
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